こんにちは、キャリアコンサルタントの尾形ヒロカズです。
若手支援に関わっていると、ときどきこんな問いに出会います。
「これって、“やりがい搾取”なんでしょうか?」
悪気なく仕事を振っていたつもりが、受け手からするとプレッシャーや無償労働に感じられていた…そんなズレが、指導者と若手の間に生まれてしまうことがあります。
支援者としても悩ましいテーマです。 特に、「やりがいのある仕事を任せたい」という善意と、「まだ慣れていない相手にどこまで期待していいのか」という慎重さのバランスは、本当に難しい。
今日はそんな「若手育成のジレンマ」について、現場で見えてきた視点を共有させてください。
「やりがい搾取」とは何か?
まず前提として、「やりがい搾取」という言葉には幅があります。
・成果に見合わない低賃金や過重労働
・責任だけ重く、裁量が少ない業務
・評価もフィードバックもない“任せっぱなし”の状態
もちろん、こうした状況が常態化していれば、支援者として止めるべきです。
ただ、現場でよくあるのはもっとグレーなケースです。
本人の「感覚」で境界線が変わる
同じ仕事内容でも、やりがいがあると感じる人もいれば、丸投げされたと感じる人もいます。
つまり、「やりがい搾取」かどうかは、客観的な業務量や責任の重さだけでは決まりません。 「どんなタイミングで、どんな言葉で、どんな関係性の中で任されたか」…ここが大きく影響します。
だからこそ、支援者側が「正しいことをしているつもり」だけでは足りないのだと思います。
ではどうすればいい?3つの視点
私が現場で意識しているのは、次の3つの視点です。
① 任せる前に“意味”を共有する
・なぜこの仕事を任せたいのか ・どんな成長につながると考えているか
これを伝えるだけで、受け手の納得感は大きく変わります。
「ただ振られた」ではなく「期待されている」と感じてもらえるかどうかが、第一歩です。
② “途中の対話”をつくる
任せたあと、成果が出るまで放っておくのではなく、途中で必ず声をかけます。
・今どこまで進んでいるか? ・難しさや不安はないか? ・支援が必要な部分はどこか?
この「対話の途中差し込み」があるだけで、若手の安心感は大きく変わります。
③ 最後に“意味づけ”を一緒にする
仕事が終わったあとに、本人と一緒に「今回どんな学びがあったか」を整理する時間をとります。
これは、本人の成長実感を言語化する場であり、支援者側にとっては「無理をさせていなかったか」を確かめる機会でもあります。
支援者のための問いかけ
若手を育てる立場にある方にこそ、自分に問いかけてみてほしいことがあります。
- 任せる前に、背景や意図をちゃんと共有できていたか?
- 本人の状況を想像できる余白を持てていたか?
- フィードバックの機会を「結果だけ」に偏らせていなかったか?
支援者である私自身も、毎回この問いに立ち返るようにしています。
成長は「共に考える」中で起きる
やりがいを与えることと、負担をかけすぎること。 この線引きは、固定されたものではなく、相手との関係性やタイミングによって変わるものです。
だからこそ、「どう育てるか」以上に、「一緒に考える姿勢」が大切だと思うのです。
任せる前の一言。 任せたあとの対話。 終わったあとの振り返り。
そのすべてが、若手のキャリアと、支援者自身の信頼を育てる時間になるはずです。
読んでくださり、ありがとうございました。
この記事を読んで、
- 自分の関わり方、これでよかったのかと考えさせられた
- 若手との関係づくりに、もっとできることがある気がした
そんな風に感じた方がいれば、状況に合わせた支援の設計や対話の工夫など、現場に寄り添ったご提案も可能です。
よろしければ、お気軽にご相談ください。
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