こんにちは、キャリアと組織の未来をつなぐ人、尾形ヒロカズです。
毎年この時期になると、「新人がもう辞めたいと言っている」「研修のあとに音信不通になった」など、各所から人事・研修担当者の声が届きます。
今年は「退職代行を使われた」なんて言葉もよく聞くようになりました。
新人研修のゴールは、知識のインプットやビジネスマナーの習得だけではありません。
本当の目的は、「ここで働いてもいいかもしれない」と思ってもらうことだと私は思っています。
その実感が持てないまま配属されれば、「話が違う」「居場所がない」と感じ、離職につながるリスクも高くなる。
今回は、そんな「辞めたい」という言葉を生まないために、私が研修設計・実施の現場で工夫してきたことを5つ紹介します。
① 「できた」で終わらせず、「伝わった」をゴールにする
新人研修ではよく「伝えるスキル」「話し方の型」「報連相」などが取り上げられます。
でも大切なのは、「話したか」ではなく「相手に届いたか」。
私は研修中、ペアワークやロープレを行うとき、必ず「伝わったかどうか」の確認まで行います。
たとえば、伝言ゲーム形式で話した内容を受け取った相手が「どう理解したか」を言語化し、そのズレを一緒に確認するワークなどです。
「伝える」ことと「伝わる」ことの間には、想像以上のギャップがあります。新人にその違いを実感してもらうことで、配属後の「聞いたつもりだったのに」「伝えたのに伝わってなかった」が減ります。
② できなかった経験を「意味づける」時間をとる
失敗や戸惑いは、成長のチャンスです。
でも新人はその意味が分からないまま、自信を失ってしまうことがあります。
だからこそ、研修中に「うまくいかなかったことを振り返る」ワークを入れます。
- 何が起きたのか?
- なぜうまくいかなかったと感じたのか?
- そこから何を学べそうか?
これを個人で書いたあと、小グループで共有することで、「自分だけじゃなかった」と思える時間になります。
研修は成功体験だけでなく、失敗経験を「言葉にして整理する場」としても設計したいのです。
③ 自分の言葉で「期待を翻訳」してもらう
配属前に人事や上司から伝えられる「期待」は、受け手にとっては曖昧なまま残ることがよくあります。
そこで私は、企業側から伝えられた「期待」を新人自身の言葉で翻訳する時間を取ります。
たとえば:
- 「当事者意識を持ってほしい」→「まずは自分の担当の流れを覚えて、自分から確認できるようになることかもしれない」
こうして言語化してもらうと、「何をすればいいか」が明確になり、自分ごととして捉える感覚が育っていきます。
④ 「どこに不安があるか」を全員で可視化する
どんなに研修を工夫しても、不安や迷いはゼロにはなりません。
大切なのは、それを「見える化」すること。
私は毎年、研修の後半で「いま不安に思っていること」を付箋などで可視化し、ホワイトボードに貼り出す時間をつくります。
- 「職場の雰囲気に馴染めるかが不安」
- 「質問していいタイミングが分からない」
- 「声をかけるのが怖い」
これを全体で共有すると、「自分だけじゃない」と思えて、安心につながるんです。
また、企業側も配属前にこの不安を知れるので、職場での受け入れにも活かせます。
⑤ 配属後の「つながり」をあらかじめ用意しておく
研修が終わった瞬間、気持ちが切れてしまう新人もいます。
だから私は、研修中に「研修後に続くもの」を必ずつくるようにしています。
- 同期LINEグループやSlackのチャンネルを作成しておく
- 1か月後のリフレクション面談を研修中に予告しておく
- 気軽に相談できる先輩との「顔合わせ雑談」を先に予定に入れておく
研修の終わりを「切り離し」ではなく「始まり」に変えることで、新人にとっての心理的安全性がずっと高まります。
「離職を防ぐ」は、心理的安全の設計から
新人が「辞めたい」と言う背景には、必ず何かしらのズレがあります。
- 教わったことと、現場のやり方のズレ
- 自分の理解と、相手の期待のズレ
- 頑張りたい気持ちと、安心して動ける環境のズレ
これらを少しでも減らすには、研修段階から「ズレを減らす仕掛け」を入れておくことが重要だと思っています。
新人に「辞めたい」と言わせないための一番の方法は、
「ここで働くイメージが持てる」「話を聞いてもらえる」と感じてもらえる土台を用意しておくことです。
その土台づくりの一端を、研修設計の中に仕込んでおけたらと思っています。
読んでくださり、ありがとうございました。
「辞めたい」を防ぐには、研修や制度だけでなく、一人ひとりの「不安」や「ズレ」に寄り添う工夫が欠かせません。
もし今、新人育成や離職防止の取り組みにモヤモヤがある方は、よろしければ一度ご相談ください。
現場に合わせた研修設計や、心理的安全性を高める仕組みづくりを、伴走型でご支援しています。
▼ リベラキャリアへのお問い合わせはこちら
コメント